二重刺子

「出会い」が人生を豊かにする。 

 Philosophy of Maison TEAxtile

二重刺子(ふたえさしこ)

 

この生地に逢わせてくれたのは私の父だ。

押入れを整理していた時に、棚の奥から偶然見つかった。

 

うちは以前、硫化染め(りゅうかぞめ)という染色も行っていたが、それはもう30年も前の話。

当時は半纏を染めていたので、その時の在庫だろう。

 

その昔、火消しが火の粉から身を護る為に二重刺子で半纏を仕立てて身に纏ったそうだ。

 

初めてその生地に触れた時は、厚過ぎて自分で染めようという発想が湧かなかった。

染色技法は様々存在するが、大きく分けて生地を丸ごと染液に浸ける方法の浸染(しんぜん)と、生地の両端を引っ張り刷毛で

染めていく方法の引染め(ひきぞめ)のふたつに分類できる。

 

私が普段行っている染色法は後者の引き染めである。

張手(はりて)という針が複数ついた棒状の道具に生地の両端を固定し生地を張るのだが、染料を含んだ生地はかなりの重さになる。

案の定、二重刺子を引き染めしようとした時、張手の針が折れ、固定金具が弾け飛んでしまった。

 

しかし、見れば見るほど、触れば触るほどに生地の持つ特異さが私の心を掴んで離さなくなる・・。

もはや生地と呼んで良いのかと思うほどの厚さ、ざっくりとした織りによる凹凸。

お茶染めに更なるインパクトを与えてくれる存在感・・。

 

そこで既成の道具は諦めて自分で作ることにした。

大した道具ではないが、おかげで張手が破損することはなくなった。

以来、試行錯誤を繰り返し商品化したのが「SASHIKO TOTE BAG 01」というトートバッグだ。

 

今ではMaison TEAxtileの代名詞となった二重刺子に出逢わせてくれた父に感謝している。