「出会い」が人生を豊かにする。
Philosophy of Maison TEAxtile
伝統工芸に限ったことではないが、かつては分業制が仕事における通常のシステムだった。
染色業の場合( 絵師→彫師→糊置師→染師→仕立師→問屋→小売 )
まだ細分化できるが、大まかに見ても一つの製品が完成するまでに多くの工程があり、それぞれに専門の職人がいた。
専門の職人がそれぞれの工程を手掛けているのだから、それはそれは素晴らしい品質の製品が作られていた。
しかし、需要の減少により売上げが落ちると、大所帯の分業制は維持が難しく徐々に崩壊していく。
上の図でいうと両端の業種から廃業していき、中央に位置する染師だけが取り残された。
取り残されたというよりは、染色業界で染めの工程は代替え出来ない為、物理的に最後まで残ったというのが正確な表現だと思う。
現在「駿河和染」では染師が下絵から仕立てまで行っていることを考えると、職人ではなく作家のカテゴリーである。
染色技術はデジタルでアーカイブされており、復刻はいつでも可能になっているが、
当時の生産性と品質を再現するのは不可能なことで、それこそが伝統を途絶えさせてはいけない理由である。
ただ、現実には分業制は崩壊してしまった。
時代の流れの中で消えてしまったものを、そのままのカタチで現代に再現し維持していくのは不可能である。
それは、まるでパズルの違うピースを無理やり押し込むようなことになり歪みがくる。
では、伝統とはなにか?
産業の起こりとは、気候、風土、民度、宗教、権力、国際情勢等の時代の中から自然発生的に生まれてくるものだ。
そう考えるなら、伝統とは文化であり、文化とは人である。
つまり、今現在の人に心を向けること。
その行為の連続が時代を経て、伝統という美しく丈夫な一本の糸を紡いでいくのだ。
手段ではなく思想。伝統の「核」は常にその在り方を変化させながら、地下水のように脈々と流れ続けている。